千葉県溶協・高校生溶接講習会を開催 高校生3校7人が参加
(「溶接ニュース」2025年4月22日付 8面より)
千葉県溶接協会(廣田二郎会長)は3月21、28の両日、千葉県君津市のサンキュウリサーチアンドクリエイト東日本能力開発センターで「2024年度高校生溶接講習会」を開催した。4月に開催される関東甲信越高校生溶接コンクールの千葉県代表選手2人を含む工業高校3校7人の生徒と引率教諭らが参加し、溶接実技の講習を通じて技能向上に励んだ。
廣田会長はあいさつで「当協会では溶接技術・技能の担い手の裾野を広げるため、10年前から工業高校生向けの実技講習会を開催している」と趣旨を説明。「この講習会が溶接の面白さに触れて興味を深めるきっかけとなり、皆さんの将来にも役立つ実りある時間となれば何よりだ」と述べた。
講習会は両日とも安全衛生や溶接の基本的知識などに関する座学に続いて実技講習(溶接訓練)が行われ、全国溶接技術競技会で3年連続入賞を果たした小船迅哉氏(日鉄テックスエンジ)と石井尊士氏(日鉄溶接工業)をはじめ経験豊富なプロの現役溶接士らが生徒、教諭を相手に講師を務めた。また、2日目午後の実技講習の前には溶接デモンストレーションを実施。コンクールの競技課題である「N-2F」(被覆アーク溶接、中板裏当て金無し、下向き突合せ継手)の溶接を小船氏が前進法、石井氏(日鉄溶接工業)が後進法でそれぞれ実演し、全国競技会入賞者の腕前を披露した。
2日にわたる実技講習では、コンクール代表選手の2人のように慣れた手つきで作業を進める生徒もいれば、アーク出しの段階から講師のアドバイスを受ける生徒もいるなど身に付けた技能・技術に差がみられたが、全員共通して熱心に溶接に臨む姿が印象的だった。講習の合間に行われた模擬競技会には今年度の代表選手である高芝湊さん(京葉工業高校)と方孝凱さん(市川工業高校)、昨年度代表選手の湯浅侑人さん(同)が参加し、溶接の技量を競った。
代表選手の一人、高芝さんは「練習では良好なビード外観が得られるよう運棒の仕方を絶えず工夫している。今日は講師から電流調整や仮付けのコツを学ぶことができた。コンクールで入賞するため練習により一層力を入れたい」、同じく代表選手の方さんは「講習ではアーク長に関するアドバイスが参考になり、コンクールに生かしたい。毎回新しい発見がある溶接はとても楽しく、将来の仕事にしたいと考えている」とそれぞれ練習時の様子や講習会の感想、コンクール出場への意気込みを語った。
また、高校生の指導に当たった小船氏は「溶接のコツや感覚を伝えるのは難しい面もあるが、なるべく原因や理屈が分かるよう言葉で説明することが大切だと改めて思った。教えた分だけ生徒が成長してくれるのは素直にうれしい」、同じく石井氏は「思考が柔軟だからなのか、生徒の飲み込みの早さには毎回驚かされるとともに、教え甲斐がある。代表選手2人の作品の出来栄えは非常に良かった。ここで発揮した技量を本番でも出せれば入賞の可能性が高い」と実習参加者について講評を述べた。
同協会は溶接技能の習得やさらなる向上を目指す県内工業高校の生徒と彼らを指導する立場にある教諭を集めて毎年講習会を開催している。元々、関東甲信越高校生溶接コンクールの千葉県代表選手を対象に競技課題への対策を兼ねた実技指導を行っていた。近年は代表選手以外に受講を希望する生徒も受け入れており、正しい溶接姿勢や電流・電圧などの条件出し、溶融池の見極め方など溶接を基礎から学べる貴重な機会として教諭からも高く評価されている。
(「溶接ニュース」2025年4月22日付 8面より)