神奈川県溶接コンクール開催 34人の溶接士火花散らす 注目選手インタビュー

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神奈川県溶接コンクール開催

3月21日、神奈川県で腕を磨く溶接士が溶接技術センターに集まり、「第68回 神奈川県溶接技術コンクール」が開催された。

競技種目は被覆アーク溶接の部(手溶接)、炭酸ガス半自動溶接の部(半自動)の2種目。

2024年度に実施された日本一の溶接士を決める大会「全国溶接技術競技会」では、神奈川県大会を勝ち進んだ東芝エネルギーシステムズの中神貴紘選手が最優秀賞に輝いたこともあり、当日、参加した選手は全国制覇への意気込みを胸に競技に臨んだ。

今回のWelding Mateでは、注目選手に話を聞いた。

DSC04957.jpg被覆アーク溶接の部の様子

注目選手インタビュー

IMG_6674 (1).jpg左から種村凛哉、穴山夏海、
村山裕也選手

■ジャパンマリンユナイテッド(株)

・種村選手(半自動の部)
「2~3週間、1日8時間を溶接の練習に費やした。当日は緊張でパフォーマンスの質が落ちるかもしれないため、競技の最中に行う動作を極力シンプルにできるよう、溶接条件を整えてきた。溶接の魅力は、溶接技能者にしかわからない体感について、他企業・
他県の選手と通じ合えるところだ」

・穴山選手(半自動の部)
「どんな場所・溶接機であっても一定の溶接作業が実践できるように、その日練習する溶接機の種類を毎日変えながら研鑽を積んできた。日常業務では鋼ではなくステンレス、アルミ、銅などを溶接することが多く、素材が幅広いため毎回異なる溶接条件を『すぐに体感で把握すること』には自信がある。出場するからには優勝を目指している」

・村山選手(半自動の部)
「自社で練習をする時に、練習環境を競技会の会場に寄せて練習した。作業の再現性に拘って練習を積んできたため、100%のパフォーマンスが出るように臨みたい。溶接の魅力は、上には上がいるためゴールがないことだ。

IMG_6669.jpg左から古家駿、管野真利、秋山了亮、
富田竜我、小林述行選手

■コベルコ溶接テクノ(株)

・古家選手(手溶接の部)
「直前1週間は1日8時間練習してきた。溶接作品が、曲げ試験で割れてしまわないように、電流値で調整してきた。神奈川県大会への出場は2回目だ。緊張はしているが、ベストを尽くす」

・管野選手(半自動の部)
「溶接の肉盛りが不足する傾向にあり、電流値を上げてみたら肉盛りしすぎてしまったため、電流値を下げるといった繰り返しで微調整を行ってきた。上級者も初心者も、溶接ビードは百人百様であり、それが溶接の面白みだ」

・秋山選手(半自動の部)
「4年ぶりに溶接競技会に出場している。薄板の裏波と外観に絞って練習を積んできた。一喜一憂しやすい性格のため、日頃、溶接外観を見ては、落ち込んだり、楽しくなったり、充実感を味わえている。溶接の一回ずつ入魂する作業性が自分には合っている」

・富田選手(手溶接の部)
「ルートフェイスで裏波を制御しているため、ルートフェイスの調整に時間をかけた。緊張せずベストを尽くしたい。『精度の高い溶接』という共通ゴールに向かっているのに、人によって作業工程が異なるのは、溶接にしかない面白みだ」

・小林選手(手溶接の部)
「初参加だ。溶接は、金属が一瞬で溶融する様子が面白くて始めた。溶接外観を整えるため、手の動かし方を考えて研鑽を積んできた。全国大会に参加している選手がどのような溶接をするのかに興味があり、できれば神奈川県大会を突破して、全国大会に行ってみたい」

IMG_6670.jpg左から溶接指導員、大塚公輝、
岸田俊輔選手

■(株)IHI

・大塚選手(手溶接の部)
「2回目の出場だ。毎回、全国大会を目指して出場しており、神奈川県大会での目標は表彰台をIHIが独占することだ。薄板の繋ぎ部分の難易度が高いため、集中的に練習した。溶接は努力した分上達する技能で、上達が溶接ビードとして目に見えるのが魅力だ」

・岸田選手(手溶接の部)
「違反行為で不要な減点をされないように、安全をはじめとした『手順』に、重きを置いて練習を積んできた。初出場だが、上司から『絶対に優勝してくるように』と言われているため、気合は十分だ」

IMG_6671 (1).jpg左から村瀬一輝、三本雄大選手

■日産自動車(株)

・村瀬選手(半自動の部)
「母材が溶融する前に手を進めすぎないこと、狙った位置を溶接できることに気を付けて練習を積んできた。初出場のため、まずは会場の雰囲気にのまれず、自分のペースで作業できるように注意したい。溶接は、毎回、出来栄えが異なるため、技能の習熟が把握しやすく、それがモチベーションになっているのを感じる」

・三本選手(半自動の部)
「自動車分野での溶接は1層が基本だ。3層・4層肉盛りして溶接作品を作ることがないので、競技会に向けた練習では苦戦した。肉盛りの際に、溶接ビードが膨らみすぎてしまう傾向にあったため、しっかりと溶接棒を押し込んで、膨らまないように溶接できるように練習してきた。初出場だが、出場する以上、優勝を目指す」

IMG_6675.jpg左から野村秀樹、兼平雅樹、馬原涼太
北村雅和、徳永雄太選手

■東芝エネルギーシステムズ(株)

・野村選手(手溶接の部)
「24年度の全国大会に出場しており、溶接作品に割れがあったため、作品内部の溶込みに、若干の苦手意識がある。溶接が好きだと感じるのは、溶接ビードを先輩社員から褒められた時だ。周囲に溶接が上手な先輩社員が数多くいるため、良いビードを引くと褒められることもあり、気合が入る」

・兼平選手(半自動の部)
「溶接と曲げ試験をセットにして、繰り返し練習を積んできた。事前にできることは全て試してきたため、優勝する自信はある。溶接の魅力は自分だけの溶接ビードができあがることと、見る人が見れば、日々の努力や工夫、力量を伝えることができることだ」

・馬原選手(半自動の部)
「24年度は全国大会に進み、曲げ試験で失敗してしまった。神奈川県大会の目標はもちろん優勝だが、その後に控える全国大会でも1位になりたい。溶接の魅力は1回ずつ、自身の積み重ねた時間が、溶接ビードで表現できることだ」

・北村選手(半自動の部)
「練習では曲げ試験の対策に多くの時間を費やしており、競技会の直前期間は溶接作品の外観を整えてきた。薄板の溶接には自信がある。練習すればするほど、課題が見つかり、改めて溶接は奥が深くて難しいと感じている。溶接が上達すると、多くの構造物が制作できるようになり、ものづくりの幅が広がるためやりがいがある」

・徳永選手(半自動の部)
「中板の裏曲げ、薄板の表曲げの精度を高めていくために、過去数回、競技会に向けて整えてきた溶接条件を一新した。自信があるわけではないが、練習してきた全てを出し尽くしたい。短い溶接ビードの中であっても、見れば、自分とは全く違うアプローチで作業している作品もあり、溶接技能が奥深いと感じる」

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