小森設備工業本社工場 仕事量増加で自動溶接機を導入 「社長自ら現場に立ち、人手不足に対応」(溶接ニュース2025年2月18日付より)

ルポ
twitter fb
パイプ溶接自動機に注目集まる

人手不足が深刻化する中、パイプの溶接にも自動化が求められている。特に、パイプはその形状から高度な溶接技術が要求され、専用の自動溶接機が必要になる。

そこで、24年度の3月に仏・POLYSOUDE社製パイプ用自動ティグ溶接機「P4-4」(標準型)と同「P6-4(ホットワイヤ対応型)の2機種(販売=独逸機械貿易)を導入し、生産性を向上を図ったのが小森設備工業(茨城県下妻市)。

今回のWelding Mateでは、社長自らが工場に出て溶接を始め、工場・商業施設・病院などの空調・消火配管などの各種配管設備工事を手がける同社を取材した。

小森設備工業の溶接

小森設備工業は配管設備工事会社として、緻密なレイアウト設計・計画に基づく「配管ユニット設計・施工」、工場で溶接・加工した配管を現場で組み付ける「プレハブ配管」、各種プラント設備や給排水設備をはじめとする機器の運搬・設置を行う「搬入・据付工事」、屋内に繊細にパイプを配置する「サニタリー・空調・消火設備配管工事」、重量物や設備機器を設置するため鉄骨の柱と梁で土台を組み上げる「鉄骨架台工事」を主力事業とする。

主力となるユニットパイプ.JPG
主力となるユニットパイプ

中でも施工の中心となるのが溶接による配管ユニットの製造と、同ユニットの工事現場における組み付け・設置となる。現在は加工管を主力事業とする顧客からの発注が増えていることから業績は右肩上がりに推移している。


ただ、仕事量は増加しているものの溶接士は、ステンレス鋼管を主力とする本社工場、SGP管(炭素鋼管)を主力とする霞ヶ浦工場ともに人数に限りがある。

そこで自動溶接機を導入。特に人手に限りがある本社工場で、溶接士による溶接と自動溶接を始めることにより更なる高品質生産を目指す。


「知り合いの工場で自動溶接機を見て、高品質化と増産策として使えると思った。販売元である独逸機械貿易のショールームに足を運び、デモを見ながら説明を聞き、自分でも使えることを確認した。最初はセッティングに手間取ったが、今では操作にも慣れ、熟練溶接士に負けないぐらいに溶接ができるようになった」と導入の手応えを話す。

小森社長.JPG
小森社長


同社では、自動溶接機とヘッド2種類を導入し、250Aまでのパイプに対応。これにより、200Aまでのパイプは自動機で対応し、200A以上の大口径のパイプや、自動溶接機では対応できない材質や複雑な構造を持つパイプについては、熟練溶接士の手によるティグ溶接などで対応するようにした。


同社は工場や商業施設などの配管も仕事にしているため、工事現場での仕事も多く、導入した「P4-4」は現場に持ち込むことも可能な仕様になっているが、現場で溶接することはほとんどないそうだ。


「現在の配管工事現場は短納期化と安全性の側面から現場溶接を嫌い、プレハブ化によるボルト接合で施工するケースが増えてきた。このため工場で配管ユニットを製造し、現場で組み立てるような仕事が増えている」とする。つまり、現場での溶接がなくなったというよりは、溶接はできるだけ工場でするようになったため、導入した自動機はほぼフル稼働であるという。


さらに、同社では、自動溶接機の導入に合わせてT-DRILL社製のバーリング加工機「T-115(販売=独逸機械貿易)も導入している。


バーリング加工は、パイプの側板などに穴をあける際に縁(ふち)を作る加工方法。パイプの分岐を設ける場合通常はT字型の「チーズ継手」を用いる。しかし、バーリング加工を行うことで、例えば、パイプの側面に縁のある穴ができるため、その縁を利用して分岐パイプとの突合せ溶接が可能になり、分岐パイプの施工の大幅な合理化を図ることができる。


このバーリング加工には通常、下穴加工、引抜加工、端面加工の3工程が必要となり、大きな労力が必要だった。同機はこの3工程を1台で簡単に施工できるようにしたもの。これによりバーリング加工に必要な手間や時間を大幅に削減することができ、製造工程の大幅な合理化に貢献する。


もちろん同社のような配管施工業者にバーリング加工は欠かせない技術であるため、同機は「貴重な戦力になっている」という。

スクリーンショット 2025-02-21 142933.jpg
左:フル稼働が続く自動溶接機
右:T-DRILL社製のバーリング加工機

また、同社では昨年、これらの最新設備を導入するとともにベトナム人の技能実習生2人を受け入れた。


現在、工事現場での実習を通して、安全教育をはじめ、切断、ボルト締め、養生などの基礎的な仕事に携わっているという。

そしてもちろん、2人の成長を見守りながら、将来的には「溶接も覚えて欲しい」とする。今後は技能実習生が溶接を覚える上での最初のステップとしても自動溶接機が活躍しそうだ。

関連記事 (5).jpg

share SNSシェア
twitter fb