職業能力開発総合大学校 FSW設備導入 カリキュラム化へ
東京都小平市にある職業能力開発総合大学校はこのほど、マシニングセンタでFSW(摩擦攪拌接合)を行うことができるユニークな装置を導入した。
比較的新しい技術であるFSWを、国内の職業訓練の中核を担う同校が導入することは、知見を持つ職業訓練の指導員が全国に広がること、そこからFSWのオペレータが育つことなどが期待される。
今回のWelding Mateでは、大きな将来性が見込まれる職業大の取り組みを紹介する。
FSWとは、接合材料を摩擦熱で軟化・撹拌して接合させる技術だ。
材料を溶かさずに接合するため、溶融溶接に比べて接合部の強度低下が少なく、アルミと樹脂などといった異材接合にも適用できる。自動車や鉄道車両、航空機など幅広い分野で技術開発・導入が進んでいる。
今回、職業大が導入したのは山本金属製作所のFSW用加工・モニタリング装置「MULTI INTELLIGENCE i―stir」(MI)
同校は、指導員への教育カリキュラムにFSWを追加する計画だ。3日間で合計18時間の内容を予定し、2025年度の開始を目指す。
職業訓練としてのFSWの教育は一般化されておらず、この取り組みは国内におけるFSWの普及にとって画期的と言える。
職業大は、職業訓練指導員(テクノインストラクター)の養成や研修、これに関連する研究などを行っており、国内の職業訓練の中核的な役割を担う。ここで養成された指導員が全国のポリテクカレッジやポリテクセンターに配属され、教育・訓練を展開する。
ポリテクカレッジは全国に24校あり、学卒者などを対象に2~4年間の教育課程を実施する。
高度な知識と技能を兼ね備えた実践技能者や、生産技術・管理部門のリーダーを育てる。
ポリテクセンターは北海道に4校、東京を除く各府県に1~3校あり、在職者・求職者向けに各種訓練を行うことでスキルアップや就職支援をサポートする。
ポリテクカレッジ、ポリテクセンターともに技能と理論を兼ね備えた「ものづくり人材」を育てる重要な存在だ。
職業訓練指導員は企業からの研修の受け入れや就職支援を通して地元企業と繋がりを持つことも多く、全国に広く存在するこれらの教育機関に、FSWに理解のある指導員が配置されることのインパクトは大きい。
FAWの情報発信源としてはもちろん、現場の要望を掬い上げて潜在的なニーズを掘り起こすことで、FSW適用の可能性が拡大する。
同校ではこれまで、基盤ものづくり係・溶接ユニット准教授(※取材当時)の中島均氏が中心となってFSWの研究を行ってきた。「今回の設備導入により、これまでできなかった材質も研究できるようになる」と中島氏は期待を寄せる。
また、中島氏はメカトロ畑出身で機械加工設備への造詣が深いこともあり、これまで交流の少なかった溶接と機械加工の両ユニットが融合する契機にもなるとし、「まずは『FSWがマシニングセンタで簡単に行える』ということを知ってほしい」と意気込む。