FABTECH2024 メイトくんバイトのポールに聞く 「レーザ加工機を協働ロボットに持たせると同じスペースで働くことができないのでは?」
本当に必要なのか
世界的なトレンドとなっている協働ロボット。
従来のロボットは比較的大型であり、人間が作業すると多くの人数や体力を必要とする動作を、正確に繰り返すことを強みとしてきた。
協働ロボットは、人間と同じ環境で作動することを想定して創られているため、従来ロボットと異なり、安全柵で作業場を区切ることなく、同じ空間で一緒に働くことができる。
しかし、日々の取材活動で頻繁に質問を受け、多くの溶接事業所が疑問に思っているのが、「協働ロボットがレーザ加工機を扱っていることの意味」だ。
つまり、「『より技能者の技に近い加工を再現できる』と商社から提案を受けることが多々あるが、レーザ加工機は、目の安全を守るために遮光フィルタで作業環境を囲うのが一般的。ロボットが同じ環境で働くことができるという、協働ロボットの強みを生きないのではないか」という疑問である。
今回の Welding Mateでは、コボットと呼ばれるコラボレーションロボット(≒協働ロボット)の普及が、各段に進んでいるアメリカの、最大級の製造業向け展示会「FABTECH2024
ポールさんをインタビュー
協働ロボットは人間と同じ環境で働くことができるロボットですが、当然ながらレーザ加工機を使用する時には、遮光フィルタで覆った作業環境で作動します。
つまり同じ環境で働いているとはいえません。
しかし、アメリカ市場では、レーザ加工機と協働ロボットの組み合わせへの期待がとても大きいです。
その理由は「誰でも溶接をはじめとした加工を実践できるようになるから」。
つまり、協働ロボットの最大の魅力は、「作業環境の統一」ではなく、直接ロボットを触ってティーチングができる「ダイレクトティーチング」にあるのです。
ダイレクトティーチングの様子
また、近年の協働ロボットを操作するティ―チペンダントと呼ばれるコントローラは、従来ロボットと比較すると抜群に操作が容易です。
容易にコントローラ設定するポール
アルバイトとして、FABTECH2024の会場に到着してからロボット操作を習った私でも、端材の溶接と研磨の実演を任されているのが証拠ではないでしょうか。
日本では「職人」という目利きが製造業をリードしていると聞いています。しかし、アメリカの製造事業所には「職人」がほとんどいません。
職人の代わりに、特に薄板加工の分野は、ロボットが加工を行い、ロボットの稼働を見守る役割を人間が数値で目利きをしているのです。
アルバイトであれば見守るだけでも問題ありません。
しかし、製造業のプロになると、例えば100個の加工中に1個だけ製品不良が発生した場合、「どの工程でミスが発生したかを判断する」といったことが求められます。
レーザ溶接機による協働ロボットの溶接
事業所内にの溶接加工のプロが多ければ、必要がない機能かもしれませんが、溶接のプロが少ない事業所にとっては有意義な機能になるでしょう。
溶接・ロボット未経験のポールによる加工
1.2㎜鋼板の美しい溶接
つまり、アメリカ市場においての協働ロボットは、一緒の作業環境で働くことよりも、容易な操作性や、可搬性が高いため、加工の自由度が高いことが魅力なのです。