「見て覚えろ」以外の溶接技能伝承法 ハイスピードカメラ活用 ポリテクセンター君津(溶接ニュース2024年7月16日付より)
溶接、特に被覆アーク溶接においては、他人がどのようにビードを引いているか見るのが難しい。
理由は、強いアーク光でそもそも肉眼で視認できないからだ。
だからこそ溶接は、「技能伝承」が課題とされる。
そこで、今回のWelding Mateでは、千葉県君津市にあるポリテクセンター君津を訪問。溶接可視化カメラ「Cavitar Welding Camera」を駆使して技能伝承の課題に切り込む、取り組みを取材した。
ポリテクセンター君津外観
ポリテクセンター君津では、約3年前に溶接可視化を目的にハイスピードカメラを導入した。
カメラで撮影した映像は、アーク光や溶接ヒュームなどの明かりを抑えることができるため、溶接トーチの角度や、ビードが引かれていく様子、スパッタの飛散などを克明に視認することができる。
これは、特に被覆アーク溶接の技能伝承では有効だ。
これまでは、指導者の溶接する様子を、溶接を学んでいる方は溶接面を被った状態で見て覚えていた。
同校テクニカルメタルワーク科テクノインストラクターの池田隆之講師は「鮮明な画像が見られるので重宝している」と話す。
視認できることで溶接の勘所を把握しやすく
わずかに見えるビードを引く様子や指導者が描く図を参考に指導してきたのが、カメラを導入により、モニターで様子を共有でき、明確なイメージをもって溶接ができるようになったからだ。
「溶接で重要なプールのコントロールが目視で確認でき、これまでは見られなかった受講生と同じ映像をモニターで見られるようになった」という。
池田講師の溶接作業
センターでは、溶接可視化カメラでの映像に加えて、一般的なビデオカメラを併用して使用している。
溶接ビードを引く様子をハイスピードカメラ、溶接トーチを持つ映像を一般カメラと、併せて映像化ことで効果的に利用。
「利用の際にはセッティングの手間や、カメラのピントを合わせる難しさはあるが、指導のアシストツールとしてとても有効で活用している」と池田氏は話す。