(株)内藤工機 専門技能と自動化で多様なニーズに対応 自動パイプ溶接機で半導体工場向けも

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 パイプ加工のスペシャリスト内藤工機

パイプと一口に言っても道路の下などに埋まっている上下水道やガス管など大口径の導管から、プラント機器に接続され工場内を縦横無尽に走る工場配管まで様々な種類がある。

これらの多様なニーズに応え、ガス事業法適用配管、食品・薬品配管、タンク類製缶など、各種製缶や配管加工まで、柔軟に対応する企業がある。

大阪府岸和田市に本社を構える株式会社内藤工機(西保悟志社長)である。同社の本社工場を訪ね、品質向上に基づく、自動化への取り組みなどを取材した。

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 技能者と自動機によるものづくり

内藤工機の本社工場は、天井クレーン3台と各種配管、製缶の製作設備、大型バンドソーや自動溶接機などを設備し、ガス事業法適用配管や食品・薬品配管などを手がける。また、本社工場として講習会や検定試験などの会場としての役割も持つ。溶接士は約20人で、それぞれJISに基づく溶接技能者資格のほか、ボイラー溶接士やガス事業法などの資格を持ち、専門性を生かした溶接にあたる。

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中でも同社が力を入れているのが、パイプ溶接の自動化である。

西保社長は「パイプは裏波ビートや真円性など、高度な溶接品質を求められることが多い。このため不具合が発生すると手直しに大きな手間を取られるほか、当社ではステンレス鋼はもちろんのこと、インコロイなど特殊材料の仕事を受注することもあり、失敗の許されないケースもある。このため自動化によって不良率の低減を図りたかった」とする。自動化というと、最近は人手不足を解消する目的での取り組みが多いが、西保社長は品質の確保と効率化を強調する。

同社が設備する自動パイプ溶接機は、アダプトアークマルチプロセスオービタル溶接機(製造=トリツール社、販売=独逸機械貿易)と高性能パイプ自動ティグ溶接機「POLYSOUDE P4/P6(製造=ポリスード社、販売=独逸機械貿易)の2機種3台となる。

このうちアダプトアークマルチプロセスオービタル溶接機は、1台でティグ、マグ、ミグの3溶接方法に対応すること。

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初層にティグ溶接、2層目以降にマグ溶接を用いる組合せ溶接など、溶接方法を切り替える際も大幅にセットを変えずに溶接することができる。径や厚みにこだわらずに使用できるため、大口径のパイプに特化して使用。同社では、各種非破壊検査(PTMTRT)、機械曲げ試験に98%以上で無欠陥合格するなど、大きな戦力となっているという。

一方、POLYSOUDEP4、薄肉管専用で、主にサニタリー管などの溶接に適用。クローズヘッドとなるため、フィラーは使用せず、突合せ溶かし込み溶接となることが特徴となる。取材当日は、要求品質の厳しい半導体工場向けのサニタリー管の溶接に適用。溶接ビードがわからないほど、緻密な溶接を実現していた。

POLYSOUDEP6は、管径、肉厚にはこだわなく適用できるが、オープンヘッドとなりフィラーによる多層盛が可能となるところが、POLYSOUDEP4との違いとなる。

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両機とも非破壊検査(PTMTRT)、機械曲げ試験などに99%以上で合格しており、要求品質の厳しい溶接で活躍。また、「ヘッドがコンパクトで、取付が簡易であることも大きなメリットである」という。

これら自動機は3台とも取材当日もフル稼働するなど、同社に欠かすことのできない技術になっているが、それぞれ専門性の高い仕事に適用するため、各自動機は資格を持った溶接士が担当。溶接条件のセッティングや溶接後のビードのチェックを行うほか、アダプトアークマルチプロセスオービタル溶接機では、溶接士が溶接中のタングステン電極の位置などを確認していた。

「自動機には、自動機の専門性があるので、知識と経験を持った溶接士が担当する。特に、特徴的なのが自動機の開先。自動機は共付が適しているため、厚肉管でV字開先を用いるときもルート面がない方が適している。さらに、当社の技術検討結果により、自動機の場合は、開先に若干のカーブを持たせたU字開先にした方が良好な品質が得られることがわかってきた。今後、自動機の普及を図るには、こうした自動機ならではの特徴について、いかに元請け企業の理解を得るかが課題となる」(西保社長)とする。

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取材当日は自動溶接ばかりでなく、ステンレス鋼のパイプに軟鋼製の排熱ダクトを取り付ける異種材料溶接やホットジェットを用いたプラスチック溶接など、工場の随所で溶接士の専門性の高い優れた技能をみることができた。もちろん同社では、工場内の仕事の他に、プラントや生活インフラの補修・メンテナンスなど、工事現場におけるパイプ溶接の仕事なども請け負っている。

これらの専門性の高い仕事に就くには、資格だけでなく、社内独自の実技と学科の試験で技量を確認しているという。また、仕事を覚えるためには、現場でも確認できるように、大きな写真や図を多用した分かりやすいマニュアルを独自に作成するなど、人材教育にも力を入れている。

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「溶接は熱影響によってひずみが発生したり、母材が伸び縮みするなどの独特の難しさがある。その一方、高圧ガスや化学薬品など危険物に関わるため、厳しい要求精度を求められることが多い。そこで社内ではJISよりも厳しい技量試験を実施している」(西保社長)とする。

具体的には、外観試験、引張試験に加えて、RT、UT、シャルピー、施工時間、予熱・後熱処理などを審査項目に加えているそうだ。

同社は、古参の知識力と新しい技術・工法の融合による「正確に」「速く」「美しく」を信条に掲げる。確かに、溶接士一人ひとりの高度な技量と、自動化という新しい技術によって、効率と品質を両立していた。同社では半導体工場向けのパイプのほか、水素プラントの反応管など、最先端技術にも積極的に対応している。

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