(一社)東京都溶接協会 高校生向けに溶接研修会「夏フェス」 実施!(溶接ニュース2024年9月3日付より)

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 東京都溶接協会の溶接研修会「夏フェス」

一般社団法人東京都溶接協会(横田文雄会長)では、8月8日・9日の2日間、足立区にある城東職業能力開発センターで高校生を対象とした溶接研修会「夏フェス」を開催。

都内にある工業系の高校6校から、両日合わせて学生23人、教員6人が参加し、被覆アーク溶接、半自動溶接、ティグ溶接など様々な溶接を体験した。

この夏フェスは、過去には、「参加して溶接研修を行った学生が、溶接コンクールに出場し、そのまま溶接士を志すようになった」という実例もあり、学生・企業にとっては就職活動の機会にもなっている。

今回のWelding Mateは「夏フェス」に潜入。当日の様子を紹介する。

 溶接マイスターも集結!

当日、会場では、3グループに分かれて溶接実習に臨んだ。

①:「授業以外で溶接機を操作したことのない初心者」
②:「夏フェスに参加経験のある講習経験者」
③:「高校生溶接コンクールに出場したことのあるコンクール経験者」

この3グループを指導したのは、東京都溶接協会の会員企業から、日本溶接協会マイスターの称号を持つ、三上和則氏(前川製作所)、今年の都溶接競技会でアーク溶接の部3連覇を果たした石井尊士氏(日鉄溶接工業)ら、5人の溶接士。

溶接がほぼ未経験という初心者グループの参加者は安全教育ビデオを視聴ののち、溶接ブースで担当講師により保護具の着用方法、溶接器具の始業前点検方法など基本作業の指導を受けた。

そして、手溶接(交流アーク溶接機を使用)でのアーク発生、ビードオンプレート溶接、フラットバーを用いた多層盛りを体験。

講習経験者、コンクール経験者の2グループも最初に保護具の着用、溶接器具の始業前点検、溶接機の操作や安全心得について説明を受けてから各種溶接を体験。

講習経験者は被覆アーク溶接の基本級である下向き突合せ溶接(A‐2F)での基本的な運棒方法を勉強した。

①溶接実習中の様子.JPG

溶接実習の様子

コンクール経験者はA‐2F以外にも、ボルトとナットを組み合わせてティグ溶接で接合するアート作品作り、半自動溶接によるビードオンプレート溶接や多層盛りにチャレンジした。

 VR溶接でスコア競う

会場の一角にはリンカーンエレクトリック社製のバーチャル溶接トレーニングマシン(VRTEX360コンパクト、鈴木機工提供)を設置。

これは被覆アーク溶接のT継手隅肉溶接を体験できるシミュレーションだ。

学生、教員の全員がゲーム感覚で挑み、トーチ狙い位置、走行トーチ角、溶接速度、アーク長などの計測結果に基づき算出されるスコアを競った。

②VR溶接シミュレーションを体験.JPG

VR溶接シュミレーションを体験

同研修会に参加した練馬工科高校3年生の上原龍雅さんは第14回関東甲信越高校生溶接コンクールで優秀賞を受賞した技量の持ち主だ。

上原さんは、「溶接を楽しく学べる実習の場があるのはありがたい。元々、溶接中に発生する光や飛び散る火花といった派手な見た目に反して非常に繊細な手先の動きや感覚が要求されるギャップに魅かれて溶接に興味を持ち、コンクール出場を目指す過程で上達する喜びを知った。将来的には水中溶接のような高度な技術が求められる仕事に就きたい」と話す。

今回が初参加という東京工業大学付属科学技術高校2年生の黒田輯太郎さん。

黒田さんは「授業で約2時間の溶接実習を受けたことしかなかったが、ここでアーク出しとビード置きの練習をしているうちに段々とトーチの運び方がつかめてきた気がする。溶接ビードが形になってくるにつれて楽しさを実感し始めていて、できればコンクールにも出場してみたい」と話す。 

③夏フェスに参加した生徒、教員、講師.JPG

夏フェス参加者の集合写真

「溶接に興味を持ってもらう」、「技術向上の楽しさを感じてもらう」との目的で実務者が講師を務める、この「夏フェス」。

溶接産業に興味を持つ若手技能者の卵と、技能者不足を課題とする溶接事業所のマッチングの新たな形として注目を集める。

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