(有)平山設備 バーリング作業の時短・省スペース・省人化を実現(溶接ニュース2024年7月23日付より)
自身も溶接現場に立つ溶接士、平山靖幸社長が率いる配管溶接事業所の有限会社平山設備(石狩市)。
(有)平山設備外観
北海道内外から配管製造の依頼が絶えない同社は、「技能者の臨機応変な対応」によって支えられているという。
そんな同社の取り組みで近年注目されているのが、バーリング加工機「T-115」の導入による生産効率の向上だ。
溶接士をはじめとした技能者は「人にしかこなせない作業に集中する」という、一見、当たり前を追求する、今話題の溶接事業所を取材した。
21人が勤務する平山設備では工場作業者が10人・現場作業者7人が勤務しており、作業者は全員が一定の溶接技能を習得している。
同社の強みは「図面起こしから配管の現場据え付けまでワンストップで対応することができる」ことにある。図面から現場据え付けまで一環で対応する配管事業所は全国でも数少ないため、同社には、道内だけでなく本州からの依頼も絶えない。
幅広い顧客から支持される同社の配管工事を支える溶接技術で接合するのは、ステンレスならば1.2㎜-8㎜、鋼ならば5㎜の依頼が多い。
同社は、配管溶接で多用される「ティグ溶接でスパッタを抑え気密性を担保しながら1層目を溶接」「2層目からは入熱による接合性に強みのある半自動溶接に切り替える」という2段階の溶接作業に定評があるという。
高難度な溶接工程多数
難所は、溶接する時に押し当てると溶接トーチが滑りやすい鋼と、溶接トーチが動きにくいステンレスの両方を手掛ける上に、多くが1点物である点だ。
平山社長は「当社の溶接士はまず、鋼の溶接を習得する。その後、ステンレスは溶接棒が動きにくく感じるため、電気を入り切りしながら入熱量を調節していく。特に現場作業は仕上がりに波が出やすいため、性質の異なるステンレス・鋼の両素材に対して習熟した溶接技術を持った溶接士が対応しなくてはならない」と話す。
溶接士による精密な溶接作業
現場は到着すると、例えば、原型がわからないほど腐食し母材が摩耗しているケースなども散見され、現状、溶接士の臨機応変な対応力は欠かせないという。
そんな技能者集団である同社だが、自動化設備の活用にも積極的だ。特に同社での作業効率を高めたのが独逸機械貿易より導入したフィンランドT-Drill社製バーリング加工機「T-115」で、バーリング作業を最大200%まで効率化した。
通常のバーリング加工は、穴あけ、穴を円筒状に伸ばす加工、伸ばした部分の研磨の3段階で行われる。
左:バーリング加工中の様子
右:バーリング加工後の配管
当然1つひとつに手作業が必要で、3工程3加工機が必要だった。「T-115」は3工程を1機に集約、かつ3工程を自動化することができる。
バーリング加工機「T-115」
同社では、平均20分以上かかっていたバーリング作業が7分で終わるようになった。
また、従来バーリング工法で対応できない場合、「チーズ」と呼ばれる三又の継手を購入する必要があった。
特に分かれる配管の径が、母材配管の径と近しいサイズの場合は加工が難しいためチーズ購入が必要となるが、このチーズは高額だ。
三叉継手「チーズ」
平山社長は「T-115の導入でチーズ購入の場面が減り、生産効率だけでなく、コスト削減にも繋がった」と話す。
また、「現場据え付けまで行うことができるのが当社の強みである以上、溶接士をはじめとした技能者の力は現場作業でこそ輝く場面が多い。工場作業は極力自動化し、資機材で内製化できるポイントは極力内製化していく」と将来を睨む。
道内外で注目される大型半導体工場のラピダスでも多用されるであろう配管において、そのスペシャリストである同社の活躍は、今後も続きそうだ。