溶接バズ(有)アラヤ 7万「いいね」で話題の溶接事業所に潜入(溶接ニュース2024年8月6日付より)
今、SNSでは、自慢の溶接ビードを見せ合う、ちょっとしたお祭り騒ぎになっている。
火つけとなったのは5月29日の新家勇太さんの「X」への投稿だ。
弟の智也さんの溶接ビードの画像とともに「弟が『俺溶接うまいからな!』と調子乗ってます。Xの猛者の方々でマウント取ってあげてください」と投稿してみたところ、本当に、全国の溶接自慢がSNSに集結し、溶接ビードを披露し始めたのだ。
話題のポスト
国内外の溶接士の心に火をつけた新家勇太さんと、弟の智也さんに、今の心境と溶接の魅力について話を聞いた。
SNS「X」で、7万近い、いいね、を獲得した新家勇太さん、弟の智也さんは、大阪市生野区の溶接事業所アラヤに勤務する溶接士だ。
話題の投稿について、勇太さんは「通知音が、いつもより多く聞こえるとは思っていたのですが、延々と鳴りやまないため、『これは異常だ』と気付いた時にはいいね、が1万件を超えていました」と話す。
また、「寄せられるコメントを、読んでも読んでも追い付かずに、通知が鳴り続けるので、通知をオフにしました」と当時を振り返る。
勇太さんが「怖くなるほど」の反響があった溶接ビードは、溶接士としては9年目の弟、智也さんが、16㎜鋼板をティグ溶接で接合したものだ。
これは智也さんが、日々アラヤでの業務として1.6㎜―16㎜程度の鋼板を溶接して、製缶依頼に応える中で身に着けた技能だという。
国内外の溶接士の心に火をつけるほどの溶接技能の習得法ついて、弟の智也さんに尋ねると、「アラヤは少人数で事業を支えているため、設計・溶接・曲げといった工程ごとに作業区分がありません。顧客ごとに溶接条件、板厚、精度の依頼内容は異なり、新規案件も、一から溶接条件を全て自分で整えていく必要があります。全工程を、まずは自分で考えるという経験が溶接の腕を育ててくれました」という。
左:智也さんが溶接する様子
右:全国の溶接士の心に火をつけた溶接ビード
同社は薄板から厚板まで板厚を問わずに依頼がある。
■「半自動溶接の入熱によってひずむことを計算して、事前に逆側に曲げてから溶接を施し、ひずむことで直線にする(薄板)」
■「ティグ溶接ならば、電流を流す量を大きく小さくと、繰り返しながら、全体への入熱を抑えてひずみを少なくする(薄板)」
■「入熱しながらハンマーで叩きながら直線に修正する(厚板)」
各種、板厚に沿った、独自の工夫を欠かすことができないのだという。
今回の投稿で変わったことについて尋ねると、勇太さんは「実際に仕事の依頼がきたことに1番驚いきました」と話す。
投稿してから1ヵ月程度の間に、同社には3件の小型部品の溶接依頼が届いたのだ。
智也さんは「知ってはいたが、SNSを通じて、世の中には凄腕溶接士が、数多くいることを改めて思い知りました」と話す。
(有)アラヤの工場の様子
そんな2人の将来の夢は、父である新家高宏社長からアラヤを継承し、より大きく、より楽しく、より魅力的な会社に育てていくこと。
そのために、兄の勇太さんは「Xでのポストも同様だが、今までなかったデジタル技術を駆使して、より当社の持つ技術力にフォーカスしてもらう」、弟の智也さんは「何でも知っている父に、技能者として並ぶ」と話す。
若き溶接士2人が起こした溶接の火が大きく広がることに、胸が躍る。
左から新家勇太さん、智也さん