中島プレス工業(株) ロボット・技能者の2軸で技能伝承(溶接ニュース2024年5月28日付より)

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 100年企業の中島プレス工業

1925年創業の中島プレス工業(株)は来年2025年に、100年企業の仲間入りをする。

差し替え写真/プレス機.JPG

100年培った技能・技術が詰まる中島プレス工業

次の100年を睨む同社では、技能伝承を重点項目としている。

技能伝承について同社では、「溶接士一人ひとりの技能向上・習熟させていくこと」と「長年培った職人技を溶接ロボットに置換していくこと」の2軸で考えているという。

 2軸の技能伝承

具体的に、同社で手掛けている量産品の1つである産業用車両の足回り部品は、主に軟鋼板厚6㎜のプレス部品先端部に鋳造物を溶接している。導入にあたっては、トーチ角度や狙い位置、溶接スピードなど、ベテラン溶接士の様々な職人技を解析し、最適な溶接条件を導き出した。

鋳造物の溶接は難易度の高い技術のため、同社では10年程前から、この工程に溶接ロボットを導入し、溶接品質の安定と効率化を図ってきた。

これは、超高難度の溶接技術を「溶接ロボットに技能伝承した」ともいえる。

2019年からは、足回り部品製造工程における溶接不具合・欠品の低減、特にヒューマンエラーに起因する溶接不良を無くすことを目的に、新たな取り組みを展開。

ヒューマンエラーの要因を徹底的に解析するとともに、工程ごとに作業標準書を作成し、誰もが理解、実践できるよう「見える化」を推進した。

新ロボットシステムは足回り部品裏面の補強材であるライナー取り付け工程で実運用されており、導入に際し前回同様、それまでの溶接士の動作や所作、勘所などを動画に収録し、最適な溶接条件・環境をデータベース化するとともに、手順を詳細に作業標準書に落とし込んだ。

作業エリア近傍には工程ごとの「OKワーク」「NGワーク」サンプルを配し、その場で直ちに良否確認ができるような体制とした。

結果的に、22年度には溶接不具合ゼロを達成した。

4台のロボットがハンドリング、溶接作業を行うライナー溶接ロボットシステム.JPG

溶接不具合ゼロの新システム

当然、同社の技能伝承はロボットにだけではない。

「溶接士一人ひとりの技能向上、育成が技能伝承には何よりも重要」とする同社では、3年前から愛知県溶接競技会にも参加するようになった。

「強豪揃いの同競技会にあって、まだまだ満足いく成果を残していないが、対外試合を経験することによって、我流を見直し、他社の優れた技能を習得することができる」とし、「将来的には上位入賞が果たせるような選手を育成したい」と語る。

同社では訓練専用スペースの活用やベテラン技能士によるOJTのほか、厚生労働省の「ものづくりマイスター」や愛知県の「あいち技の伝承士」など外部講師を招き、定期的な講習会を実施するなど、技能の伝承・向上に余念がない。

同社では、溶接工程の伝承法を、プレス加工でも採用するようになり、「人とロボットが共存する夢のあるものづくり企業を目指したい」と、100年企業としての決意を新たにする。

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