秋葉原にオープンしたヨセモSTUDIOで「よせもの」を学ぶ!(溶接ニュース2024年5月28日号より)

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 「よせもの」教室が秋葉原にOPEN

東京都葛飾区の有限会社アトリエ・エイト(高橋正明代表取締役)は、「よせもの」や、ろう付を体験できる教室「ヨセモSTUDIO」を秋葉原にあるギャラリー2K540内にオープンした。

「よせもの」とは、アクセサリー製作などに使われる、ろう付をするための下準備となる「よせ」の技術を使った日本の伝統的な溶接技術だ。

「寄せ物」と書くが、文字のごとく、さまざまなものを「寄せ」集めて、飾り「物」を作る。特に、金属のパーツを溶接して細かな装飾品を作る技術として継がれてきた。

一方で「よせもの」は、多くが親族間などでの伝承されており、一般に知られることは少ない。大量生産技術の普及により、この技術は殆ど見られなくなってしまった。

しかし、繊細さや軽さを求めるティアラやブローチなどの精工なアクセサリーは「よせもの」の技術でしか作ることができないものもある。ヨセモSTUDIOは、そんな「よせもの」技術を広く普及し、技術を継承していくために作られた。

 ヨセモSTUDIOとは

ヨセモSTUDIOでは、「よせもの」やろう付により、アクセサリー製作を体験することができる。

バーナでフラックスを塗る様子.JPG

ろう付けをする様子

同社の代表を務める高橋氏は、大学卒業後にフィンランドの有名な建築設計事務所で働いた後に帰国し、建築設計、プロダクトデザイン、ジュエリーデザインなどを手掛けていた。

その際、高橋氏のご両親が手掛けていた「よせもの」を継承する職人がいないことを知り、装身具製造の仕事を継承。

高橋氏は自身のブランド「MASAAKi TAKAHASHi」を立ち上げ、「よせもの」で作ったアクセサリーの販売を行っている。

同教室は高橋氏と、専門学校で高橋氏が教えた広井さん(画像右)と大場さん(左)で運営している。2人は専門学校で「よせもの」やろう付を学んだ。

一般的な溶接と同じくバーナの火に慣れることから始まり、火を当てすぎて焦げてしまう、よせ粉を砕く際に手をけがしてしまうなど細かなミスを約2年続け覚えたという。広井さんは今では、「溶接をしている夢を見る」と話すほどの溶接女子だ。

溶接を行う広井さん.JPG

ろう付を行う広井さん

 よせものを作っていただいた

同教室で体験できる「よせもの」は皿に盛ったよせ粉と呼ばれる泥のようなものにアクセサリーにする石座などを並べることから製作が始まる。

続いて、並べたジュエリーにフラックスを塗りながらバーナで銀ろうの棒を挿しながら溶接を行っていく。

石座と石座の隙間を埋めるように溶接していく点はろう付としては珍しい。溶接が終わり冷めると、土台となっているよせ粉の皿を割り、アクセサリーを取り外す。

最後に、塩酸で洗って汚れを落とし、ドライヤーで乾かすと完成だ。

ろう付で作った指輪.JPG

ろう付でつくった指輪

試作として作っていただいた「よせもの」はパーツが少ないため30分もせずに完成した。

完成したアクセサリーは、この後に色鮮やかなクリスタルガラスが留められメッキ加工が施されるというが、素材のままの真鍮や銅でも鮮やかに発色した美しいものに仕上がっていた。


だが、200個などのクリスタルガラスが寄せ集められたティアラなどを作る際には、クリスタルガラスを留める石座一つにつき3ヵ所溶接する場合、600ヵ所溶接を施す必要がある。その数を端から順番に溶接すると熱膨張が一方向に加算されてしまうため、熱の入れ方も分散させながら溶接するので集中力を要するという。

世界的に希少な技術となったことや熟練した技巧を身に着けたこともあり、高橋氏は自身のジュエリーブランドを持つだけでなく、世界的なファッションブランドからのアクセサリー製作の引き合いが絶えないという。

溶接は日々進歩していく一方で、一部消えゆく技術もある。

「よせもの」技術を残すため知られることが必要だ。秋葉原を訪れた際には同教室に訪れてほしい。

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