菊川工業(株) 代表取締役会長宇津野隆元会長 溶接町工場の脱炭素への取り組み 

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 菊川工業 脱炭素イベントで登壇

東京商工会議所が主導する、中小企業の脱炭素を支援する「Tosho攻めの脱炭素」事業。

その一環として、同商工会が4月25日に、丸の内二重橋ビル(東京・千代田区)で開催した「Tosho攻めの脱炭素セミナー」で、溶接事業所の菊川工業(株)宇津野隆元会長が登壇。自社の脱炭素への取り組みを発表した。

今回のWelding Mateでは、溶接町工場が着手する、「等身大の」脱炭素への取り組みを紹介する。

 カーボンニュートラルとは

脱炭素といえば、真っ先にカーボンニュートラル(CN)が思い当たる。

CNとは、温室効果ガスの排出を「実質的にゼロ」にすることを指す。

実質的なゼロとは、例えば温室効果ガスを排出したとしても、同量の温室効果ガスを吸収する取り組みを行えば、地球上の総量に与える影響は差し引きゼロにすることを意味する。

また、実現すれば、「地球温暖化は抑制」「自然環境は回復」「干ばつや洪水などが起こる可能性もグッと低減」など、人類にとっての安やらな暮らしの多くが叶うとされている。

しかし、現状のCNは、非常に抽象的で壮大だ。「必要性は理解できるが、CNのために何をすればわからない」といった声を、頻繁に耳にする人も多いのではないだろうか。

さらに、溶接をはじめとした金属加工が必要な多くの事業では、脱炭素といってエネルギー燃料を制限してしまうと品質に影響が出ることも多いため、CNは後回しになりやすい。

だからこそ、中小町工場に分類される菊川工業(株)が、積極的にCNをはじめとした脱炭素化に取り組んでいる事実は、業界内外からの注目度が高い。

 菊川工業のカーボンニュートラル

菊川工業は、建築物の金属製内外装工事に加えて、オーダー装飾建材のメーカーという顔を持つ溶接事業所だ。

そんな同社のCNへの取り組みは複数項目ある。

従来ティグ溶接.JPG

菊川工業の溶接士のティグ溶接

①:廃棄物(紙製品・木くず・廃プラスチック)のリサイクル

同社では、ごみ捨てにおける分別項目を、従来項目から、さらに細分化し、マテリアルリサイクルを推進している。

リサイクルには、廃棄物を原料に戻して再利用するマテリアルリサイクルと、固形燃料等にして熱エネルギーを回収するサーマルリサイクルなどがあるが、環境負荷を低減するにはマテリアルリサイクルに優位性があるとされている。

②:エネルギー使用量の削減

具体的には、エア工具を極力使わず、電動工具の使用を推進している。理由は、圧縮した空気の力で動かすエア工具の動力源はエアコンプレッサであり、エアコンプレッサの稼働はエネルギー消費量が多い。つまり、電動工具に比べてエア工具はエネルギー効率が悪いのだという。

また、同社では、空調の温度設定を冷房セ氏28度・暖房セ氏20度と決めているため、空調によるエネルギー使用量を定量的に把握しやすい。これにより、広い工場敷地内で、「何にどれだけのエネルギーを消費しているのかがわからない」といった課題の発生を低減させている。

③:原材料および副資材の購入量削減

これは、材料ロスを低減させるため、標準部材を設定し、できるだけ標準部材を使用するという取り組みだ。同社では、梱包を簡素化するといったことにも積極的に取り組んでおり、梱包資材の使用量が削減されたというデータが出ているという。

④:社員の意識改革

同社では、社内ポスターなどによりCNや、SDGsを啓発するだけでなく、管理職会議での成果報告会を実施。また、定期的に従業員を対象とした勉強会も開催している。また、社内には、部署横断的な組織として「カーボンニュートラル推進委員会」を設立しているという。

今後更に進んでいくことが想定される脱炭素社会に向けた取り組みについて、「金属加工業には難しい」と、さじを投げることなく取り組んでいく同社の姿勢には、「NOと言わない」「まずは挑戦」といった、同社が掲げる菊川イズムを、確かに感じ取れる。

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