TSMCの一大計画に貢献 「日本一の管工事屋」目指す (株)出田産業 出田広大社長(溶接ニュース2024年2月20日号より)

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  「日本一の管工事屋」目指す出田産業

熊本市東区で、空調配管、プラント配管の製作・工事などを手掛ける株式会社出田産業は、「日本一の管工事屋」を目標にしている溶接事業所だ

大きな目標を実現するにあたり同社では、自動溶接機やバーリングマシンをはじめした省力化装置の導入や工場の新設などのハードを整備。また、品質をより高めるべく、熊本大学と産学連携協定を結び、「酸洗の研究」を進め、「妥協をしないものづくり」の姿勢が、産業界からも高い評価を受けている。

結果的に、同社は、所在する熊本県で計画が進行している、世界最大手の半導体受託メーカーTSMCが出資しているJASMの工場建設に関連した配管制作と工事の案件も手掛けるに至った。

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出田産業の工場外観

今回のWelding Mateでは、同社の高度な技術と、社会的インパクトの大きい一大プロジェクトへの貢献について話を聞いた。

 

  溶接のハード面強化に注力

出田産業は1984年に創業し、空調設備に使用する温水配管、冷水配管、冷温水配管の配管製作・工事を主業務に、プラント配管、消火配管に加えて、タンク・ヘッダーの製作、機械器具の設置など、幅広い事業を手掛けている溶接事業所だ。

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溶接士の技術力にも定評がある出田産業

空調設備向けの配管の溶接では、白ガス管や黒ガス管などの炭素鋼管を中心にステレンス鋼管も含めて、ティグ溶接や半自動溶接を製品の大きさや使用環境を考慮して使い分ける。

同社では、商業施設のテナント改修などで必要になる小口径の鋼管から、ホテルや工場、ビルなどの大型施設で使用する大口系まで幅広いサイズに配管加工と施工に対応しており、大型のものであれば口径が1000Aサイズになる製品もあるが、400~500Aサイズの鋼管を取り扱うケースが多いという。

出田広大社長は、「案件ごとに全てをティグ溶接で接合する部位や、ティグと半自動溶接を組み合わせるコンビネーション溶接など様々な溶接方法の使い分けが必要になるが、管工事を手掛ける当社にとって溶接品質はユーザーからの評価と信頼性に直結する部分であり、決して妥協してはいけない工程だと考えている。そのためには自動溶接機などの機械を活用し、品質の高度化と標準化を両立させる『ハード』の充実を図る取り組みも重要だ」と話す。

  機械化の推進

ハード面を充実させるにあたり、同社ではポリスード社製の自動ティグ溶接機P4を独逸機械貿易から導入。加えて、計4基の自動ティグ溶接機を活用している。また、バーリング加工時の省力化と、品質を高い水準で安定させるために、2022年に同じく独逸機械貿易からTーDrill社製のバーリング加工機TEC220を導入した。

配管加工ではパイプに穴をあけて分岐部をつくることは「バーリング」と呼ばれる工程が必要となるケースもあるが、人が手作業で行う場合には相応の技量とリードタイムが必要となる。

同社が導入した「TEC220は、下孔加工、引抜加工、端面加工の3工程が1基で行えるのが強みだ。

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TEC220

出田社長は「従来工程を分けて実施していた孔あけと引抜加工・端面加工を1つの加工機で統合できるためリードタイムは劇的に短縮した」と話す。また、「当社ではTEC220でバーリング加工した部分を自動ティグ溶接機P4で接合するなど、複数の加工機を組み合わせた機械化を進め、品質と生産性向上の効果をより高める生産体制を構築している」と話す。

   熊本大学と産学連携協定

同社では2020年から九州最大級のステンレス酸洗槽が稼働しており、漬け込みによる酸洗処理により溶接焼けやサビなどを洗浄・除去し、品質や耐久性を高める処理を社内で実施できることも強みだ。そのため、酸洗の効果を高めるために熊本大学と産学連携協定を結び、酸洗に関するデータの測定・分析を実施し、酸洗槽に投入する各薬品の割合や付漬け込み時間などを最適化する研究も行ってきた。

同社が機械などのハード面への投資、産学連携の研究など意欲的な取り組みを実施している意図を出田社長は「品質を含めて、妥協しないものづくりを継続していくことで、『日本一の管工事屋』となり、世界に進出していくことを本気で目指している」と力強く語る。

  TSMC関連の配管を担当

近年、「日本一の管工事屋」を目指す同社にとって追い風となるような動きも、周辺で活発化している。同社はプラント配管の案件を強化するべく、2019年10月にステレンス鋼管の配管加工能力の増強などを目的とした第2工場を着工(竣工は20年4月)。

ほぼ時を同じくして世界最大の半導体受託メーカーTSMCが熊本県に進出する計画が発表され、同社の本社と工場がある熊本東部金属工業団地から車で約15分圏内の熊本県菊陽町に大規模な半導体の新工場が建設される運びとなった。

出田社長は「半導体の新工場建設予定地から近い土地に製造拠点があり、第2工場を新設し、生産能力を増強していた。また、半導体製造に欠かせない水の配管において、空調設備の配管工事などで実績のある当社が評価され、半導体の新工場に関連する配管制作と工事の案件を獲得することができた」と話す。

  日本一の管工事屋への意気込み

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日本一への決意を新たにする出田社長

同社ではユニット製品への対応力強化および、生産力増強に向けて、23年に鋼管加工専用の第3工場を竣工。

4.8t用と2.8t用クレーンと大型鋼管の高速切断にも対応した加工機が稼働するなど大小問わずに鋼管加工が可能な生産体制をより強固にしている。

出田社長は、「今後は原子力関連産業への参入を目指していく。電気事業法やガス事業法に基づく溶接方法の承認が必要となるなどハードルはあるが、『日本一の管工事屋』を目標としている以上、配管に関しては、どのような産業分野でも対応できる企業でありたい。そのためにはプラント配管でも、特に求められる品質水準が高度で厳格な原子力産業に対応できる力をつけることが重要になる。妥協をしないものづくりを継続するとともに、パイプ加工機関連の専門商社として原子力産業でも実績のある独逸機械貿易の知見なども参考しながら設備投資などを含めて、参入への足がかりとなる取り組みを進めていきたい」と将来を見据える。

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