「部長って大変!」 平塚工科高校機械部の新部長、野口竜聖さんインタビュー
日本溶接技術センターにて1月20日に開催された、「第15回神奈川県高校生溶接技術コンクール」。
近隣の工業高校6校から計12人が出場し、被覆アーク溶接の技術を競った。今回、神奈川県大会を突破して、関東甲信越大会に駒を進めることになったのは平塚工科高校の野口竜聖さん。4月から高校3年生になった野口さんに、心境の変化や関東甲信越大会への意気込みを尋ねた。
第15回神奈川県高校生溶接技術コンクール
早咲きの桜が散り始めた新学期、私は高校3年生になり、平塚工科高校機械部の部長になった。多くの人が経験してきたことなのかもしれないが、部長は思ったよりも大変だ。
後輩は当たり前のように溶接技能について尋ねてくるため、「後輩に溶接を教える」という新たな役割が生まれた。
まず、溶接作業は個人の感覚が大切なため、慣れるしか解決策がない。そこで、私は溶接する時の姿勢についてを教えるようにしている。私自身、なかなか溶接姿勢が定まらなかったため、神奈川県溶接技術コンクールに臨む直前まで溶接姿勢を調整していた。後輩には、早い段階で溶接姿勢を定めることで、溶接作業により集中できることを伝えたい。
定まるまで時間がかかった野口さんの溶接姿勢
また、部長になってから、活動費に目を通すようになり、「鋼板の値段」には驚いた。
低学年の時には「先輩の使った鋼板ではなく、新品の鋼板で練習すればもっと上達する」と思うことが多かったが、9㎜鋼板は目が飛び出すほどのコストにあることを知った。
平塚工科高校だけの課題ではないとは思うが、「先輩が過去に練習した9㎜鋼板を溶断し、2つにしてから、再び溶接して接合する」という練習方法しか、高校生には選択肢はないのだ。また、その環境の中で、どれだけベストを尽くせるのかが大切なのである。
新品の練習鋼板を使わないことで気が付いたことがある。
それは、溶断に失敗すると、切断部を直線状に研磨してから溶接の練習をすることになるということ。つまり、溶断が上達すると溶接練習の時間が増えて、溶接技術も向上する。
技能は、どうやら連動しながら上達していくものようだ。
溶断しては溶接してを繰り返す練習鋼板
平塚工科高校の授業カリキュラムでは、1年生は溶接に触れる時間が年間10時間にも満たない。2年生になるとガス溶接が15時間、半自動溶接が15時間。
奥深い溶接技能を学ぶには時間が足りないため、更に学びたい生徒は機械部に入部することになる。そこで、希望者が神奈川県溶接技術コンクールに出場する。
私は神奈川県大会を突破して、関東甲信越大会に駒を進めることができた。しかし、神奈川県大会は他校の3年生が優勝したが、卒業となったため、繰り上がりで私が関東甲信越大会への出場切符を手にした。
悔しくないわけではないが、せっかく出場するのであれば、他県の高校生の溶接技術レベルを観察して、私や、平塚工科高校がどのレベルにあるのかを把握する機会にしたい。
神奈川県大会を制した溶接鋼板と野口さん
また、関東甲信越大会に進むことを、当校の先生や、卒業していった先輩が喜んでくれていたため、「溶接で結果を残すことは、溶接を教えてもらった恩返しになる」と感じている。
将来の夢などは決まっていないが、実家の側で働き、両親を安心させてあげたい。手に職とされる溶接技能は、私の暮らす平塚市での勤務先も多いため、漠然とではあるが、将来は溶接士になるのではないかと考えている。