乗りこみ操作する大型国産ロボットを手掛けた7人の町工場(溶接ニュース2024年1月16日号より)

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 世界が注目する国産搭乗操作型ロボット

今、多くの注目を集めるツバメインダストリ製の搭乗操作型ロボット「アーカックス」をご存じだろうか。

アーカックスは、各種SNSで「ついにガンダムが実現した」「実際に買うことも操縦することもできるロボットの時代が来るとは」「エヴァンゲリオンに乗れる日も近い」といった多くのコメントが寄せられ、国内外に多くの驚きを与えた。

劇中で、ガンダムを作っていたのは巨大軍事組織だ。エヴァンゲリオンを作ったのは政府の特務機関。つまり、両方とも超巨大組織によって生み出された。

そんな中、「ガンダムやエヴァンゲリオンのようだ」と国内外で話題となったロボット「アーカックス」のフレーム製造と組立を担当したのは、埼玉県春日部市の溶接事業所である南鉄工所。従業員7人の町工場である。

2023年に生まれ、最も注目を集めた溶接構造物の一つといえるアーカックスと、そこに使用された溶接技術についてを取材した。

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(アーカックス製造に関わった6人の技能者)

 アーカックスの溶接加工

アーカックスに溶接技術で命を吹き込んだ南鉄工所の南伸吾社長は、「2021年にツバメインダストリのアーカックス開発プロジェクトに参加した。設計はできても、実際にフレーム製造できる依頼先がないと聞いたので、『当社の技術力を証明する』と意気込んで依頼を引き受けた」と話す。

溶接事業所南鉄工所の南伸吾社長.jpg

(当時を振り返る南伸吾社長)

しかし、アーカックスのフレーム製造は、決して楽な道のりではなかったという。

まず最初の壁となったのは、同社では、日常業務としては9㎜~25㎜程度の中・厚板の溶接依頼を引き受けることが多い。そんな中、アーカックスを中・厚板で製造すると10トンを超える超重量になってしまうため、自重に絶えきれずに潰れてしまう懸念があった。そこで、南鉄工所では0.8㎜~4.5㎜の薄板鋼板を採用した。

薄板の溶接に対応するにあたって、同社では従来作業で使用してきた溶接機を低電流に設定して使ってみたが、安定しなかったため、新たに、薄板溶接に対応するためにパナソニック製溶接機「YD-350VR1」を導入。

左工場内観、右YD-350VR1.jpg

(工場内観と新設備YD-350VR1)

南社長は、自身も製缶工及び溶接士として製造にあたっているため、「低電流から高電流まで安定性に強みを持つと聞いた新溶接機を導入した。新しい溶接機に慣れるのに多少、時間はかかったが、評判通り、低い電流値でも安定した加工を施すことができた」と当時を振り返る。

また、薄板を使うと、強度面に課題があったため、アーカックスの足の付け根となるパーツは内部が「ハニカム構造(薄い素材でも強度を保ちやすいハチの巣状の形状)」に似た作りとなっており、強化されている。しかし、複雑に鋼板を組み込んだ構造を溶接していくにあたり、終盤作業ではトーチを持った手が入らない部分も多く出てきたのだという。

蜂の巣にみられるハニカム構造.jpg

(蜂の巣に見られるハニカム構造)

南社長をはじめとする同社の溶接士は、鋼板に事前に丸型の穴をあけて、そこから手とトーチを入れて、実際には見ることができない状況で溶接を行った。南社長は、「強いアーク光から目を守るために、遮光面ごしに限られた視界で行う通常の溶接作業でも職人と言われている。それを、全く見ずに、手の感覚だけを頼りに、溶接する難易度は各段に高かった」と当時を振り返る。

アーカックス骨組み溶接(左)、アーカックスの台座溶接(右).jpg

(アーカックスの溶接と台座の溶接)

また、後脚、腰フレームのサスペンション取付けブラケットなど各所で溶接ひずみを高精度に抑える技術が要求された。同社では、反対側から同様の溶接を施すことでひずみを打ち消し合う、ひずみを矯正するために熱を加えながらプレスするといったような工夫で対応した。いずれも溶接士ならではの職人技となるため、同社では幾度もツバメインダストリの設計者と協議しながら作業にあたったという。

南社長は「製造したロボットが稼働するのかチェックに立ち会った時に、稼働部がスムーズに動いた時には、関係者一同、大喜びしたのを覚えている」と話す。

運搬用の台座なども製造した同社では、無事、アーカックスのフレーム製造と組立を成し遂げた。結果的に大きな反響を呼んだアーカックスは、4億円以上の値段が付き、国内外のハイエンド層からの需要を獲得している。

(アーカックス動作テストの様子)

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