日本製鉄、低温靱性と耐水素ぜい性を両立した液化水素用ステンレス鋼開発

溶接
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日本製鉄はこのほど、低温靱性と耐水素ぜい性を両立する液化水素用ステレンス鋼「HYDLIQUIDⓇ」を開発した。同製品は主に液化水素ステーションにおける利用を想定した鋼材で、ASME規格のオーステナイト系ステンレス鋼「XM―19」の成分範囲内にて、マイナス196℃におけるシャルビー衝撃試験にて横膨出量が0.46㍉以上となるように成分設計がされている。


 近年、国内では水素社会の実現に向けて水素燃料電池(FC)を動力源とするFCVやFCバス向けの水素ステーションが約160箇所で建設されるなど整備が進む。現在、国内で稼働している水素ステーションは圧縮機で約80MPaまで圧縮した高圧の水素ガスをモビリティに充填する形が主流だ。圧縮ガス水素ステーションでは高圧の水素ガスに耐えうる引っ張り強度と耐水素ぜい性を兼ね備え、かつ溶接施工も対応可能な鋼材として同社が開発した「HRX19Ⓡ」が、鋼管部分を中心に数多く採用されており、国内の水素利活用の推進に貢献している。


一方で圧縮水素と比較し、体積が約800分の1とより大容量で運搬・貯蔵できる液化水素の活用に対する関心は高く、産業ガス関連企業や輸送機器メーカーを含めて、普及と商用化に向けた技術開発が活発化。液化水素ステーションの建設に向けた検討も産官で進んでいる。

半面、液化水素はマイナス253℃と超低温になるため、液化水素ステーションの配管や継手などに使用するステンレス鋼には低温靱性の高さと耐水素ぜい性および強度も必要となる。そのようななか、「HYDLIQUIDⓇ」では「XM-19」(ASME規格)の成分範囲の中でバナジウムとニオブの含有量を低減するとともに熱処理を最適化することで液体水素用の鋼材として必要な低温靭性を強化し、なおかつ耐水素ぜい性と強度も必要レベルを実現。

液化水素など超低温での使用に最適化した「「HYDLIQUIDⓇ」と高圧水素ガスの環境に強い高強度の「HRX19」など、水素の特徴に合わせた使い分けや、ASME規格に適合した「XM-19」としての使用ができるという。

なお、「HRX19Ⓡ」では溶接施工ができる性質から、プラントエンジニアリングや配管加工を得意とする溶接事業者が水素社会の実現に貢献するべく、高品位かつ生産性を高める溶接技術の開発に取り組むケースも見受けられた。

同様に溶接可能な「HYDLIQUIDⓇ」でも「HRX19Ⓡ」の溶接技術も活かしながら、新たなイノベーションを生み出す新技術の開発が期待される。

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【溶接ニュース2023年9月12日付より】

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