JFEスチールがカーボンニュートラルに貢献する新溶接工法開発

溶接
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 JFEスチール(東京・千代田区、北野嘉久社長)は、カーボンニュートラルを実現する新溶接工法「FLE×B溶接」を開発。鋼製構造物の寿命長期化を実現するとともに、労働時間・使用原材料を低下することができる。鋼構造物は長期間にわたって使用されるケースが多く、定期的に老朽化に伴うメンテナンスなどが欠かせない。一方で、メンテナンスコストや更新コストは、高額となるとともに、時代の変容とともにボリュームを変えていくものなので、「少しでも低減したい」といった事業所からの声に応えた。

 橋梁などの構造物には補強用鋼板と呼ばれるサポート鋼板を溶接接合するケースが多い。従来は、このサポート鋼板を囲むように溶接接合していくのが一般的だった。そこを新工法では、短辺と長辺に分けて、短辺側を先に溶接し、その短辺溶接部を挟み込むように長辺側を溶接する。
 新工法の開発により、溶接部の疲労き裂の起点になる箇所の応力レベルを軽減し、「疲労き裂」の発生を遅らせるとともに、疲労き裂の進展を抑えることで、疲労損傷への耐久性を高めることを実現した。新工法を駆使すると、耐久性が向上するため、従来よりも日本鋼構造協会(JSCC)の定める疲労等級が1等級向上する。
 また、新工法は、従来の溶接施工法より作業を単純化できる。溶接施工後に疲労強度向上を目的として実施していた表面処理などの作業工程を省略でき、施工能率の向上にも寄与する。また、疲労損傷への耐久性を高めた同社の厚鋼板であるAFD鋼を新工法と併用することで、さらなる耐疲労性能が期待できる。
 同社では今後、橋梁・船舶・建設機械・産業機械等の鋼構造物の耐久性、安全性、経済性の向上に寄与する高機能鋼材の開発と新たな溶接施工法を確立していくとしている。
 橋梁などは、自動車などの交通荷重が繰り返し作用し続ける構造物のため、溶接部へのリスクとして、特に「疲労き裂が発生」などリスクをはらんでいる。同社の「疲労き裂が発生」に特化した新工法を活用することで、守られる橋梁などを通じた安全、コスト低減による事業所の経営など、三方よしの新工法への期待度は高い。

(左)従来工法、(右)新工法

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