FCドローンの用途拡大へ開発進む

産業ガス
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 産業用ドローンを構造物のインフラのメンテナンスや物流などに活用する動き活発化するなか、長時間の飛行時間が可能な燃料電池(FC)ドローンで用途拡大に向けた開発が進んでいる。

FCドローンはリチウムイオン電池搭載ドローンと同じ重量であれば約3倍以上の飛行時間が実現可能とされる。最近ではドローン用のFCシステムのさらなる高性能化と安全性を高めるための研究・開発に加えて、高所における構造物の穴あけ作業や家庭への食品配送など具体的なサービスや作業への展開を目指す動きも活発化している。

カスタマイズドローンメーカーの菱田技研では壁面に吸着する機構を持つ「壁面吸着親子ドローン」における動力源のFC化を進めている。壁面吸着親子ドローンは吸着グリッパで壁面に吸着し、ドローン固定させることで、コア抜きやドリルによる穴あけなど反力(支持箇所に生じる力)の発生する作業をドローンで行うことを可能にしたドローン。

菱田技研では壁面吸着親子ドローンをFC化

橋梁およびプラントなど高所の点検を安全かつ、効率的に実施できるツールとしてカメラ搭載のドローンを利用した検査サービスなどでは市場が形成されつつあるか、壁面吸着親子ドローンでは試験片の採取など微破壊を伴う検査や補修および清掃など手を使う多くの高所作業をドローンに置き換えることができる。

「リチウム電池ドローンによるインフラ点検や作業はドローン自体の動く時間が短く、ドローンで作業できる内容も動作が単純で、短時間で終わるものに限られていた、反力の発生する作業が可能な壁面吸着親子ドローンがFCドローン化することで、高所において作業可能な範囲が大きく拡大できる」と菱田技研の関係者は強調する。

そのほか、FCドローンメーカーのロボデックスは保温・保冷製品やデリバリーバッグのメーカーと共同でFCドローンの積載に対応したデリバリーバッグを開発。ドローンの機動性および速達性に加えて、長時間の飛行が可能なFCドローンの特徴を活かした、フードデリバリーサービスへの展開が期待される。

 様々な使用方法の模索が進む一方で、FCドローンでは他の動力源を使用するドローン同様にペイロード(積載重量)の限界が実用的に運用していく上でのボトルネックとなっている。

そのようななか、小型軽量かつ発電効率の高いFCシステムを開発し、FCを軽量化することドローンに搭載可能なツールや物資の重量を引き上げるとともに飛行時間の長時間化を図る動きも見受けられる。

自動車部品と工作機械などを手掛ける日新製作所ではFCドローンなどにも積載可能な小型汎用機器用FCシステムの開発を進めている。既に同社ではFCドローン用採用を想定した水素対応の減圧バルブなどを開発するなど、自動車部品製造と工作機械の製作で培われた熱間鍛造やアルミダイキャスト、および機械加工をはじめとする金属加工技術をFC関連製品への開発にも展開。加えて、同社ではレーザ(パウダーベッド方式)による金属積層造形(AM)を3台導入している。

同社の関係者は現在、FC関連製品の開発や試作において、具体的な金属AM技術の適用は無いとしながらも、「金属AMは内部に複雑かつ機能性の高い構造を持たせる製品を造形することに適しており、部品内部に冷却効率が高く、切削や金型加工では加工が難しい水冷用の配管を設けたい場合などに利用できる。FCシステムの開発においては、小型軽量化および発電効率の向上に向けて、FC自体の温度を安定させることも必要となるケースも出てくる。FCの温度を安定させる水冷システムなどの試作や製造で金属AMが活用していく可能性はある」とする。

 

 

 

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