フレッシュマン講座 ー溶接法の種類ー
溶接には様々な種類があり、各溶接方法の特徴やその特性によって細かく分類され、使用する装置や溶接材料も各溶接法によって異なる。JIS規格では「2個以上の母材を接合される母材間に連続性があるように、熱・圧力、またはその両方によって一体にする操作」と定義されるが、ここでは、アーク溶接をはじめとする代表的な溶接法を紹介する。
■アーク溶接
工場などで火花を飛ばして金属を接合している光景を目にしたことがあると思うが、その多くが「アーク溶接」にあたり、最も一般的な溶接方法である。
アーク溶接は、アーク放電と呼ばれる電気の放電現象によって得られる熱で金属を溶かして接合する方法である。
アーク熱を溶接に応用するには、溶接部を外気から遮断するためのシールドが必要になる。外気に含まれる酸素や窒素は靱性の低下やブローホール(気孔)の発生など、溶接品質に悪影響を及ぼすためだ。
このシールド方法の違いなどによって、アーク溶接は十数種類に分類される。中でも代表的なのが被覆アーク溶接と半自動アーク溶接である。
被覆アーク溶接は「手溶接」とも呼ばれる。文字通り手動であるため、その接合品質は溶接作業者の技能に大きく左右される。洗濯ばさみを大きくしたような「ホルダ」と呼ばれる道具で溶接棒をはさみ、溶接電源(溶接機)から供給される電気でアークを発生させ、その熱で溶接棒と母材を溶かして接合する。
溶接棒には、接合したい金属の種類に合わせた成分が配合されているほか、心線が被覆剤で覆われており、この被覆剤が熱で溶けてガスやスラグを発生し、アークをシールドする仕組みになっている。
半自動アーク溶接は、リール状に巻かれた溶接ワイヤを、トーチ(被覆アーク溶接のホルダに相当)に付いているレバーの操作で供給する。この溶接ワイヤと母材をアーク熱で溶かし溶接する。
被覆アーク溶接では、溶接棒がなくなると溶接を中断して交換しなければならないが、半自動アーク溶接はレバーの操作だけでワイヤが供給されるため、長尺材の溶接でも中断することなく溶接できるメリットがある。さらに、トーチからシールドに必要なガスも溶接部に当たるように供給されるため、溶接技能者に求められる技能も低減される。
半自動アーク溶接は、要求品質などによってシールドガスを使い分けるが、このガスの種類など(実際にはガスだけでなく様々な溶接条件の違いがある)によって炭酸ガス溶接、マグ溶接(アルゴン80%+炭酸ガス20%の混合ガスなど)、ミグ溶接(アルゴン100%、アルゴン+ヘリウムの混合ガス)などに分類される。
ティグ溶接は、不活性ガス(イナートガス)の雰囲気中でタングステン電極と母材の間にアークを発生し、その熱で溶加材(溶接棒や溶接ワイヤに相当)と母材を溶かして溶接する方法。ちなみに、ティグ溶接の「ティグ(TIG)」は、タングステン・イナートガスを略したものである。
不活性ガスには、アルゴンガスを用いるのが一般的でJIS K 1105にその品質が規定されている。
不活性ガスによってアークと溶融池を外気から完全に遮蔽するため酸素、窒素、水素などのガスや不純物の混入を防ぎ、また、溶接士はアークと溶融池を明瞭に観察できることから裏波形成が比較的容易で、スパッタやスラグの発生がないことから高品質が要求されるワークに適用されることが多い。ただ、炭酸ガスアーク溶接などと比較して溶接能率が低い(溶接速度が遅い)などの欠点もある。
■抵抗溶接
金属に電気を流すと、その抵抗作用で電気が金属に蓄積し、熱エネルギーに変換される。ジュールの法則と呼ばれる抵抗発熱現象である。この抵抗発熱を溶接に応用したのが「抵抗溶接」である。
重ねた母材の両側を電極チップではさみ、通電と接触抵抗(母材やチップの接触部の抵抗)を制御するための加圧によって、局部的に母材を溶融させ接合する。抵抗発熱を利用しているため、アーク溶接が母材の片面から溶接していくのに対し、抵抗溶接は電極で母材をはさみ、母材同士の接触面である内側から溶融していくのが大きな特徴である。
抵抗溶接は、電極で溶接個所を一点ずつはさんで溶接する「スポット溶接」と電極を円盤状にし、2枚の円盤で母材をはさんで溶接する「シーム溶接」の2種類が一般的に使われる。
■その他の溶接
アーク溶接や抵抗溶接はそれぞれアーク熱を熱源として金属を溶かして溶接し、これを融接と呼ぶ。融接にはこのほかレーザ光を熱源にしたレーザ溶接、ガス炎を熱源にしたガス溶接、電子ビームを熱源とした電子ビーム溶接、プラズマアークを熱源にしたプラズマアーク溶接などがある。
また、母材を溶融することなく低融点の溶加材のみを溶融し接合するろう接は、その溶加材の種類から、ろう付とはんだ付の2種類に分けられる。この他、摩擦を利用した接合法として、摩擦圧接や、2000年代に入り、アルミニウム合金をはじめとする軽合金の接合法として適用が広がってきた摩擦攪拌接合(FSW)などがある。近年話題の金属アディティブマニュファクチャリング(金属3Dプリンター)も、金属が溶融して凝固するという、溶接と同じ原理からなる加工法と言える。