「回転TIG溶接技術」による積層造形技術 高速造形と欠陥レス造形を両立

積層造形(AM)
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 写真は,3Dプリンティング・プロセスおよび金属アディティブ・マニュファクチャリング(金属AM)向け専用トーチ「3DPro® RotoTIG」。大陽日酸(本社・東京,永田研二社長)が同社独自技術の「回転TIG溶接技術」を適用して開発した。専用トーチはスギノマシン(本社・富山県滑川市,杉野良暁社長)と製品化を進め同社の高い設計技術力と融合させ,航空宇宙,自動車,半導体分野などでニーズの高い造形欠陥レスの高品位な部品造形に対して,同技術を新たなソリューションとして展開する。

 大陽日酸が開発した回転TIG溶接技術は,トーチ中心からワイヤを送給し,その周囲をタングステン電極が周回しながらアーク入熱を与える構造で,方向依存がなく均等な入熱・ワイヤ挿入を可能とした新技術。

 専用トーチ「3DPro® RotoTIG」による新3Dプリンティング・プロセスは,ティグ方式の特徴である無欠陥・酸化レスの高品位な溶接技術を金属AMで実現するとともに,ワイヤアークDED方式による高速造形とティグ方式による欠陥レス造形が両立できるのが特徴。ティグ方式はタングステン電極を用い溶接部に不活性ガスのシールドを行うアーク溶接方式。ワイヤアークDED方式はエネルギー源としてアークプラズマを用いて金属ワイヤを溶融・凝固させ,積層造形を行う3Dプリンティング方式で,大型造形を短時間で造形することができる。

 3DPro® RotoTIGは,トーチの中心軸から供給される金属ワイヤに対して熱源となる電極が周回方向に自在に回転する独自構造のため,走査方向によらない自由なツールパスの設計を可能とした。これによって金属AMにおける全方向への積層パスに対応して,進行方向に対する電極位置を維持し,一定の品質・形状で積層ビードの形成が可能となる。

 大陽日酸は金属AMを重点事業分野と位置付け,溶接プロセス,ガス精製,熱処理などの産業ガスアプリケーション技術を金属AMでの課題解決に繋げ,革新的な商品開発や生産合理化,カーボンニュートラルに貢献するため,グローバルに事業を推進する方針。

▲金属AM向け専用トーチ「3DPro® RotoTIG」

 【溶接技術2024年11月号より】

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