溶接仕事に就いたことを心配していた両親を安心させてあげたい 福島県の女性溶接士(溶接ニュース2023年10月31日号より)
福島県溶接協会(高野次郎会長)は10月4日に、福島グリーンパレス(福島市)の瑞光の間にて、第68回福島県溶接技術競技会の表彰式を開催。この競技会は6月10日に福島県内の溶接士69人が参加し、アーク溶接の部(手溶接)、半自動溶接(半自動)、ティグ溶接の3種目で行われたものだ。表彰式の当日、会場に集まった入賞者の中でも、特に注目を集めていたのが、他の参加者よりも一回り小さい女性溶接技術者の齋藤志乃さん(ティグ溶接の部)。「(入賞の)産報賞をゲットしました」と顔いっぱいに笑みをうかべる齋藤さんに話を聞いた。
溶接士になって4年目です。いつも両親が「女の子が溶接仕事をするのは危険なのではないんじゃない?」と心配しているので、入賞することができたことで、少しは両親を安心させられると、嬉しく思っています。
溶接競技会に向けて練習を始めたのは、競技会の1ヵ月前から。鋼板と鋼板のつなぎ目の部分の溶接作業が、とても難しいと感じて、先輩社員に何度も相談しました。私は絵を描くのが好きなので、溶接作業を繰り返しているうちに、徐々に絵画と溶接は似ていると感じることが増えました。
日常的には、3mを超える大型構造物に、肉盛り溶接を施しています。友人と話していると、「そんな大きな構造物への溶接と、絵画の、どこが似ているんだか...」と驚かれることも多いです。しかし、丁寧に、少しずつ、キャンパスに色をのせる作業と、幾度も溶接トーチで肉盛り溶接を行う工程は似ています。思い通りに溶接ビードを描けた時の充実感も、思い通りの色が描けた達成感とそっくり。競技会では、思い通りのビードが引けたという達成感もあったので、入賞という結果には、満足しています。
溶接士になった理由は、求職中に、たまたま目に入った大型構造物への溶接作業に圧倒されたからです。自身の体よりも大きな構造物に対して、青く光る火花を纏いながら作業する溶接士は、「まるで怪獣と闘っているような」頼もしさがありました。溶接士になってからは、苦戦することも多いが、繰り返し練習することで、着実に上達する溶接作業は、私に向いていると思っている。
溶接士になって良かった点と、厳しいと思う点は似ています。厳しいのは、工場での作業は、夏は暑くて、冬は寒いところ。しかし、寒暖の差が大きい職場で体を動かしているうちに、風邪をひかなくなり、体が強くなってきたのを感じています。今から溶接士を目指す人がいたら、「やりがいのある仕事ですよ」と伝えたいです。