産報新書007 秋葉原日記 第五集 -SANPO WEB連載コラム集-
価格: 1,257 円 (本体価格:1,143円)
馬場 信
新書判 /
422頁
ISBN978-4-88318-706-5
本書は産報出版WEBサイト「SANPO WEB」のコラム「秋葉原日記」を集めたもの。秋葉原の風景はもとより、時には溶接業界の出来事や社会時評、読書、旅行などで構成し、豊富で充実したコラム集となっている。また、必ず添えられている写真とともに分かり易く読みやすく編集されている。人気コラム集第5弾(2011年6月から2012年6月を収録)。
秋葉原、今
昨日は秋葉原をゆっくりと一回りしてみた。秋葉原に勤めてはいても、普段は秋葉原の街自体をじっくりと見て回るというのは実はそうはないこと。
相変わらずにぎやかだ。平日の昼下がりなのに大勢の人々が行き交っている。とくに電気街は活況が戻ってきたような印象だ。
ただそれもつぶさに見ると中味が大きく変化していることに気づかされる。
大型電気店の看板が次々と塗り変わっていて往時の面影は薄くなっているし、栄枯盛衰の厳しさをうかがわせている。多くは電気店からサブカルチャーの店などへの転換が進んでいるものだ。
例えば、かつて、パソコンが普及しIT時代に突入した頃には、新聞やテレビがトレンドを探る店として頻繁に登場していたラオックスのパソコン館が、6階までの全館がその名もAKIBAサブカルチャーズという店に変わっていて象徴的だった。
もっとも、だからといって秋葉原が衰退しているかといえばまったくそうではなくて、逆に一層に華やかになってきているのが現実だ。
そして外国人の姿が多く見られるのも昨今の秋葉原だろう。もとより新宿や渋谷のような大繁華街ではないけれどもこれは秋葉原の特徴だろう。
先週は1週間の間に赤坂、六本木、銀座と行く機会があったのだが、それでわかったことは、国際色ということでは断然秋葉原が色濃いということ。1時間も街角にたたずんでいれば10カ国くらいの人々を容易に認めることができるほどで、とくに西洋人、東洋人を問わない。道行く人々の約10%は外国人ではないか、大げさではなくそう実感できるのが秋葉原だ。秋葉原に比べれば銀座も赤坂や六本木すらもローカルで、秋葉原はまさしく「世界のAKIBA」だ。
ところで、この『秋葉原日記』を書き続けて満5年になるが、通りをぶらぶら歩き、名店を探し、世相を切り取ってきた。振り返ってみると、この5年間こそがこの秋葉原で最も変化の激しい時期だったようにも思われる。
つくばエクスプレスが開業し、ヨドバシカメラが進出してきて、AKB48などというものが秋葉原を拠点に活躍しているこの頃。まことに猥雑な街といわざるを得ないが、それこそが秋葉原の魅力でもあり、この先どのような街となっていくものか、混沌として容易には見当もつかない、それが秋葉原でもあるのだろう。
(本文より)