産報新書003 秋葉原日記 第二集 -SANPO WEB連載コラム集-
価格: 1,257 円 (本体価格:1,143円)
馬場 信
新書判 /
326頁
ISBN978-4-88318-702-7
本書は産報出版WEBサイト「SANPO WEB」のコラム「秋葉原日記」を集めたもの。秋葉原の風景はもとより、時には溶接業界の出来事や社会時評、読書、旅行などで構成し、豊富で充実したコラム集となっている。また、必ず添えられている写真とともに分かり易く読みやすく編集されている。人気コラム集第2弾(2008年6月からの1年分を収録)。
神田祭
先週末は神田祭だった。今年は2年に1度の大祭の年にあたりことのほかにぎやかだった。
金曜日の夕方から会社の周辺では、テンテケテンテケ、チンチン、ピーヒャラと祭囃子が聞こえてきていた。
華やかなのは土曜日に行われる神幸祭だろうか。総勢300名もの時代行列が氏子内を巡幸する。
勇ましいのは日曜日の神輿宮入だろう。これぞ江戸の祭りという風情だ。
神田祭はもとより神田明神(正式には神田神社)の祭礼。
神田明神は、当社所在神田佐久間町一丁目を含む神田、日本橋、秋葉原、大手町、丸の内など108カ町会の総氏神。江戸時代には江戸総鎮守として崇められた。
神田祭の山車は、将軍上覧のため江戸城中に入ったところから「天下祭」とも称されたほどで、江戸三大祭りの一つと言われる。ただ、現在の祭りで山車はなく御輿が中心だ。
日曜日には秋葉原駅から神田明神にかけて周辺一帯が祭り一色だった。
宮入のため各氏子町会から集まってきた御輿は秋葉原を経て神社へと向かう。
参加した御輿は90基というから豪華だ。108町会で90基だから参加していない町会の方が少ないくらいで、江戸の祭り好きがよくわかる。
とくに明神下から神社へと至る坂道は宮入の順番を待つ御輿が列をなしていて華やかさもいっそう盛り上がる。
境内で宮入の模様を見ていた。
大鳥居から人垣でびっしりだ。その人垣を割るように次々と御輿が入ってくる。
1つの御輿で担ぎ手が40人ほどか。これに同行しているものも入れると1基あたり100人からの集団だ。
御輿はエイサコラサという担ぎ手の勇ましいかけ声で激しく揺らされながら進んでいく。
このかけ声も、じっくりと聞いていても実際のところ何といっているのか聞き取れない。しかも、町会ごとにそのかけ声も少しずつ違うようだ。とにかく江戸らしく歯切れだけはよい。
御輿は社殿に到着すると揃ってお参りをしお祓いを受け手締めをして引き上げる。この手締めも江戸らしく1本締めだ。
新たに入ってきた御輿と引き上げる御輿が境内ですれ違うのだが、ごった返してはいるものの喧嘩ごとはない。
東神田、室町一(室町一丁目)、末廣、岩本町、松枝町お玉が池などと次々と繰り出されてくる御輿の町名を見ているだけでも江戸の風情が感じられて楽しいものだった。 (2009・5・11)
(本文より)